【2023年版】初心者におすすめの資産運用方法10選!特徴や注意点を解説
投資による資産運用を検討している場合、どれがベストなのかは投資家の収入や資産状況等によって変わります。
とりわけ初心者は「低コスト」や「安定性」を優先したいところですが、具体的にどの方法が低コストで安全なのか、またそれが本当に自分に合っているのか不安に感じている方は少なくないでしょう。
そこで今回は、初心者におすすめできる10種類の投資方法に、そもそもなぜその方法がおすすめなのか、具体的なメリットやデメリットも含めて解説していきます。投資初心者が選ぶべき証券会社についても、取扱銘柄や手数料の違い等に注目してみましょう。
目次
初心者が投資方法を選ぶ際のポイント
まず投資を始める際に選び方を一歩間違えると投資で増やすはずのお金が減ってしまい、日常の生活に影響が出てしまう可能性もあります。そのため、初心者の場合は特に選び方を知っておく必要があります。
初心者が投資を始めたいとき、どのような基準で選ぶことができるか、選ぶ際のポイントを押さえておきましょう。
- 余剰資金で行える投資方法を選ぶ
- リスクとリターンの大きさで選ぶ
- 運用する期間で選ぶ
余剰資金で行える投資方法を選ぶ
投資初心者は、収入や家計状況に応じて「余剰資金」で始められる投資方法を選びましょう。
余剰資金とは、生活に必要なお金や貯蓄分を差し引いたときに残るお金のことであり、万が一ゼロになっても困らないお金のことを指します。
これが守られないと、投資が失敗したときに生活そのものが立ち行かなくなってしまうからです。実際に、生活に必要なお金も投資に回してしまったことで生活に困窮したり、新たに借金をしなければならなくなった人は少なくありません。
リスクとリターンの大きさで選ぶ
投資行為はどの方法も少なからずリスクがありますが、リスクの大きさとリターンの大きさは、おおむね相関関係にあります。
- 資産を失うリスクが小さい ≒ 短期での大きなリターンはあまり期待できない
- 資産を失うリスクが大きい ≒ 短期・長期ともに大きなリターンを期待できる
たとえばFX(外国為替証拠金取引)は市場の動きが激しく、損切りのタイミングも難しいので初心者にとっては少しハードルが高いです。しかし、もし高いレバレッジをかけたうえで売買に成功すれば、資産を大幅に増やすことができます。
リスクとリターンは、常にトレードオフの関係にあります。双方のバランスを取るには、自分の収入や資産状況について改めて見直し、期待するリターンを得るためにどこまでリスクを許容できるか試算したうえで、投資方法を選択するべきです。
運用する期間で選ぶ
投資を行う理由が「短期で稼ぎたいから」なのか、または「中長期的に資産形成したいから」なのかによって、選ぶべき投資方法は変わります。それぞれの投資方法によって、想定される運用期間が異なるからです。
初心者も含め、基本的には「中長期的に見たとき、一定以上のプラスを期待できる」投資方法を選ぶべきです。運用期間が長期であるほど複利効果が高くなりますし、結婚や出産などのライフステージを見据えた資産運用ができるからです。
初心者におすすめの資産運用ランキング10選
次は初心者にもおすすめできる、10の資産運用方法についてそれぞれ解説していきます。
資産運用 | おすすめポイント |
投資信託 | 少額投資が可能、低リスクで初心者向け |
株式投資 | 売却益だけでなく、配当金や株主優待が受けられる |
REIT(リート) | 低リスクで不動産投資ができる |
AI投資(ロボアドバイザー) | AIによるアドバイス・提案が受けられる |
不動産投資 | マンションやアパートの家賃収入が得られる |
太陽光発電投資 | 「FIT(固定価格買取制度)」により、20年間売電価格変動なし |
FX(外国為替証拠金取引) | 初期投資があまりかからず、24時間いつでも取引可能 |
財形貯蓄 | 基本的に給料から天引きされるので、使う前に貯金できる |
生命保険 | 保険に加入することで貯蓄もできるが高リターンは期待できない |
預貯金 | 銀行に預けるだけなので、資産は増えない |
投資信託
投資信託とは、投資家が自ら金融商品を運用するのではなく、専門の運用会社にお金を預けて運用してもらう仕組みのことです。初心者でも分散投資によるリスクヘッジが簡単にできるため、全年代から人気が高い資産運用方法です。
投資信託のメリット
- プロが運用する
- 簡単に分散投資できる
- 少額投資が可能
投資信託では「販売会社」を通じて投資家から集めたお金を「信託銀行」がまとめて管理します。その資金を元手として、運用会社に所属する投資のプロ(ファンドマネージャー)がポートフォリオを組み、複数の銘柄に投資します。
この仕組みにより、投資に関する知識や経験が少ない初心者でも、分散投資によるリスクヘッジが簡単にできます。
またファンドによっては1,000円、また100円という超少額から購入できるものもあるため、低リスクを優先して「慣れるまでは少額で投資したい」と考える方にも向いています。
投資信託の注意点
- 所定の手数料がかかる
- 価格変動リスクはなくならない
- 信頼できる運用会社を選ぶ必要がある
投資信託は「購入時・運用中・換金時」に手数料が発生しますが、中でも運用中に発生する「信託報酬」は無視できないランニングコストです。そのためファンド購入時には、利益・損失に手数料等を加味してトータルリターンを試算する必要があります。
くわえて株式や債券などの価格は常に変動しますし、売買自体は運用会社にすべて任せているため、投資家はほぼ手出しや口出しができません。だからこそ信頼できる運用会社を選ぶことはファンド選びと同じくらい、またはそれ以上に重要なのです。
株式投資
企業が発行する「株式」を売買するのが「株式投資」です。投資家は常に価格が変動する株式を売買することで利益を得られますが、投資家は企業の「株主」となり、議決権などの「経営に参加する権利」も有します。
株式投資のメリット
- 株価の高騰で利益を得られる
- 定期的に配当金を得られる
- 株主優待の対象となる
企業より購入した株式は、購入したときの価格よりも高いときに売却することで、差額分の利益(値上がり益)を得られます。市場を読むのは難しいですが、企業業績や市場の動向、世論などに注意を払い続けることで予測することは可能です。
株主になると、企業から年2回程度の頻度で配当金を受け取ることができます。これも値上がり益と同様に、投資家にとっての収益となります。また株主は株主優待の対象となり、自社商品・サービスの割引や優待といった特典を受け取れます。
株式投資の注意点
- 価格変動で多額の損失を出すリスクがある
- 常に価格変動をチェックする必要がある
- 損切りを前提に運用しなければならない
株価は企業の業績や景気、投資家の動向や社会情勢などの影響を受けやすいです。それこそ秒単位で常に変動しているため、投資家はツールを用いて常に株価をモニタリングしている必要があります。
特に投資初心者は知識や経験が少なく、上記の要因から株価の変動を見極めるのが難しいため多額の損失を出しやすいです。価格暴落時には損失を最小限に留めるために、適切なタイミングで「損切り」する必要もあります。
REIT(リート)
最初に解説した投資信託に「不動産投資」を組み込んだものを「REIT(リート)」または「J-REIT」といいます。
運用会社が投資家から資金を集めて運用する、という基本的な仕組みは投資信託と似ていますが、投資対象がマンション物件などの不動産である、という大きな違いがあります。
REIT(リート)のメリット
- 高利回りが期待できる
- 資金が少なくても不動産投資が可能
- 運用は投資のプロが行う
REITは他の資産運用方法と比較しても、比較的高い利回りを期待できます。なぜなら法人税を免除してもらう代わりに、運用利益のうち9割以上を投資家に配当しているからです。主な収入源が売却益でなく「家賃」である点も、収益の安定性に寄与しています。
さらに個人で不動産投資を行うよりも、はるかに少額から始められます。通常、個人で不動産投資を始めるためには、物件購入費として数百万円から数千万円の初期費用が必須です。しかしREITなら一口1万円程度から購入できるため、投資初心者でも気軽に参入できます。
REITの注意点
- 投資信託だが不動産投資と同様のリスクを有する
- 予期しない自然災害や火災に弱い
- 「J-REIT」が倒産する可能性はゼロではない
REITにおけるリスクは、規模こそ違いますが個人で不動産投資を行う場合のリスクとほぼ同様です。
金利上昇や経年劣化による物件価格の下落、修繕費用の増加や、より条件の良い近隣物件の影響を受けて、当初の想定よりも家賃収入が大幅に少なくなるかもしれません。
また不動産投資の要である「建物」は、火災や大規模な自然災害、運営法人の倒産などの「不測の事態」に弱いです。
通常の投資信託と同様に、運用・対処のすべてを運営法人に一任することになるため、不測の事態が起きても投資家はほぼ手出しをすることができません。
AI投資(ロボアドバイザー)
AI投資(ロボアドバイザー)とは、投資にかかわる選考や選択、決定といったプロセスを自動で行ってくれたり、投資に関する提案・アドバイスをしてくれるサービス、および投資行為のことを指します。
国内でも大手を含め、いくつかの証券会社がAI投資(ロボアドバイザー)を提供しています。
AI投資(ロボアドバイザー)のメリット
- AIによる適切な投資アドバイス
- 運用を一任することも可能
- 少額から投資可能
ロボアドバイザーでは、それぞれの資産状況や投資のスタイルに応じて、AIが投資に関する適切なアドバイスをしてくれたり、なかには「投資一任型」といって、金融商品の運用そのものを任せられるサービスもあります。
また証券会社によっては100円という少額から「アドバイス型」の資産運用が可能であるため、低リスク・低コスト性を重視する方にも向いています。
AI投資(ロボアドバイザー)の注意点
- 手数料がかかる
- AIの予測は完全ではない
- 投資戦略を理解する必要がある
投資を一任するタイプのロボアドバイザーは、投資信託と同様にサービス利用期間中は手数料が発生し続けます。提供している証券会社により変動しますが、平均で年率1%程度のトータルコストを含めて収支シミュレーションを行う必要があります。
またロボアドバイザーで活用されるAIは性能が上がっていますが、それでも予測を間違えることがあり完璧ではありません。特にアドバイス型のロボアドバイザーを利用する場合は、あくまで投資家を「手助けするもの」という認識を持っておくべきでしょう。
不動産投資
不動産投資とは、マンションやアパートなどの不動産を購入し管理者となり、入居者から支払われる家賃や物件の売却により収入を得る投資方法です。長期的に安定収入を得ることが可能ですが、土地及び物件の選定が最大のカギとなります。
不動産投資のメリット
- 長期的に家賃収入を得られる
- 売却益(キャピタルゲイン)を得られる
- 収益を他の所得と損益通算できる
不動産投資が「長期的に不労所得を得たい」と考える人に人気なのは、10年、20年以上にわたって家賃収入を得られる見込みがあるからです。自己資金の割当が高いほど支払うローンも少なくなり、それだけ多くの収益を上げられることになります。
もちろん不動産は売却しても収益になりますが、不動産投資は「節税」を目的として行う人も多いです。他の収入がある方は損益通算すること、また物件の減価償却によって見かけ上の所得を減らし、所得税や住民税を節税することができます。
太陽光発電投資
自宅にソーラーパネルを設置し、発電した電気を売ることで収益を得る方法が「太陽光発電投資」です。家庭で発電した電気は電力会社が買い取りますが、その買い取り金額の一部は利用者が「賦課金」という形式で負担することになります。
太陽光発電投資のメリット
- 長期での高利回りを実現可能
- 価格変動リスクがほぼない
- 太陽光パネルは耐用年数が高い
- 初期費用がなくてもフルローンで始められる
太陽光発電投資では、太陽光パネルを一度設置してしまえば、その後は安定的に発電および電力の売却が可能です。さらに「FIT(固定価格買取制度)」という制度により、20年間は同じ価格で電気を買い取ってくれます。
また太陽光パネルは比較的耐用年数が高く、実際に同じパネルで20〜30年程度運用された実績があります。もちろん定期的なメンテナンスは必要ですが、環境さえ整えば発電・売電し続けられる点は、太陽光発電投資ならではのメリットです。
太陽光発電投資の注意点
- 設置の仕方を間違えると効率的に発電できない
- 自然災害による破損時の損害が大きい
- 大きな収益を得たい人には向いていない
太陽光発電の肝となる「太陽光パネル」は、設置の仕方が非常に重要です。自宅といってもどこにでも設置できるわけではなく、もっとも日光が長時間当たる場所、さらには天気の影響や落下や破損の危険性がもっとも少ない場所を選定しなければなりません。
設置方法を間違えたり少しでも設置場所がずれると効率的に発電できず、売却できる電気量も減ってしまいます。また、どれだけ耐用年数が高くても物理的な衝撃には弱いため、地震や津波などの自然災害リスクが高い土地での設置は避けるべきです。
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FX(外国為替証拠金取引)
海外の通貨を購入し、その通貨を別国の通貨に交換する際に生じる「為替差益(キャピタルゲイン)」により収益を得る方法を、FX(外国為替証拠金取引)といいます。
FXでは為替差益だけでなく、2つの為替の金利差により生まれる「スワップ収益(インカムゲイン)」も利益となります。
FX(外国為替証拠金取引)のメリット
- レバレッジ取引により高効率での資金形成が可能
- 数千円程度から投資できる
- ほぼ1日中取引できる
FXのメリットを理解するうえで「レバレッジ取引」は欠かせない要素です。レバレッジとは一時的に証券会社から融資を受けることで保有資金を超えて取引できる仕組みですが、FXは株の信用取引よりも大幅に高い「25倍」ものレバレッジ取引が可能です。
為替の購入はコストが低く、初期投資に関しても数千円という安さから可能です。レバレッジを活用すると自己資金が低くても収益性の高い投資戦略を建てられますし、株のように取引所の時間制約もないため、基本的に24時間取引できる点もメリットです。
FX(外国為替証拠金取引)の注意点
- 株式投資よりもギャンブル性が高い
- ハイレバレッジは莫大な損失につながる
- 生活習慣が不安定になりやすい
FXは投資ではなく「投機」だと言われることが多いのは、為替の値動きを予測するのはほぼ不可能に近く、たとえ経験者でも「これから上がるだろう」という一種のバイアスで投資するケースが多いからです。
とりわけ注意しなければならないのが、最大25倍まで設定できる「ハイレバレッジ」状態です。たとえば、保有している通貨の価値が突然暴落した場合、投資家は損失を最小限に抑えるため、早めに「損切り」する必要があります。
しかし仕事中や寝ている間に「強制ロスカット」が発動すると、ポジションが確定されその時点での損失が確定してしまいます。結果的にレバレッジを掛けている分の損失が発生し、資産の大半を失ったり、多額の借金を背負う可能性があります。
財形貯蓄
貯蓄は「自力でやるもの」と認識している人は多いですが、給料から天引きした分を自動的に定期預金や保険商品に投資して積立できる「財形貯蓄」が利用できるかもしれません。財形貯蓄には3つの種類があり、会社の制度によって加入できる種類が異なります。
財形貯蓄のメリット
- 自由資産だけでなく住宅・年金目的に特化して貯蓄できる
- 一定額まで利子が非課税になる
- 貯蓄が続かない人でも半強制的に貯蓄できる
財形貯蓄は用途が限定されない「一般財形貯蓄」、老後資金に特化した「財形年金貯蓄」、住宅資金に特化した「財形住宅貯蓄」の3つに分けられます。どれに加入できるかは会社によって異なります。
とりわけ55歳未満が加入できる、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄はおすすめです。それぞれ異なる目的に特化しているためモチベーションを保ちやすく、さらに利子が最大550万円まで非課税になるという節税面のメリットもあります。
積立分が「給料から天引きされる」という良い意味での強制力がある財形貯蓄は、リスクは最小限に抑えたいものの、自力で貯蓄・積立を続けられる自信もない、という方におすすめできます。
財形貯蓄の注意点
- 導入済みの会社でしか契約できない
- 利回りは高くない
- 一般財形貯蓄は利子非課税の対象外
財形貯蓄は、そもそもこの制度を導入している会社でしか契約できません。社員と会社双方にメリットがある制度ですが、導入は任意だからです。未導入の会社であっても、従業員一人の要望によりすぐ導入してくれるケースは少ないでしょう。
財形貯蓄で運用する商品は、定期預金や国債・地方債、貯蓄型生命保険や共済などの低リスク商品が多く、高い利回りによる効率的な資産形成を期待するのは難しいです。また用途が自由な「一般財形貯蓄」に関しては、利子が課税対象となります。
生命保険
保険会社が販売する貯蓄性が高い生命保険は、資産運用のために活用できます。ただしうまく活用するためには、満期に受け取れる保険金や解約時に受け取れる返戻金など、大前提となる要件について理解する必要があります。
生命保険のメリット
- 貯蓄型生命保険は低リスクで確実な積立が可能
- 貯蓄と保障を両立できる
- 保険会社による貸付制度を利用できる
貯蓄型生命保険では、毎月保険料として支払う金額を積立額に見立てて、満期や解約時にその積み立てた分をまとめて受け取ることができます。万が一保険期間中に被保険者が死亡しても、満期までの保険料支払いは免除されます。
基本的に保険料は口座からの自動引き落としであるため、貯蓄のようにモチベーションが保てなくなりリタイアしてしまうリスクも少ないです。またお金に困ったときは貸付制度を利用し、保障を継続したまま返戻金の一部を「借りる」ことも可能です。
生命保険の注意点
- 低リスクだが高いリターンは期待できない
- 好きなタイミングで出金できない
- 早期に解約すると元本割れする
生命保険による資産運用は、あくまで貯蓄型生命保険の仕組みを利用しているだけなので、株式投資やFXのような大きなリターンを期待することはできません。
また商品の特性上、満期を迎えるか解約しなければお金を受け取れず、資金の流動性が低くなります。その解約に関しても、申し込みから数年、または数ヶ月程度で解約すると、簡単に元本割れしてしまいます。
貸付制度により積立額の一部を「利用」することはできますが、あくまで「借りている」だけであり、満期や解約時に受け取れる金額が少なくなってしまう点には注意が必要です。
預貯金
今回紹介する資産運用方法のなかで、もっとも低リスクなのが「預貯金」です。資産をただ積み上げるだけでなく「運用」することを前提に考えるなら、ここまで紹介したいくつかの「投資」と両立させることが現実的な手段になります。
預貯金のメリット
- 元本が保証されている
- 好きなときにお金を引き出せる
- 他の投資との両立も可能
銀行にお金を預けておくだけなら、基本的に維持費や手数料などのコストは発生しません。途中で積み立てたお金を引き出すか、銀行が破綻でもしない限り、積み立てたお金の一部または全額がなくなるようなことはありません。
しかし「資産を運用する」という観点で預貯金を考える時、ここまで解説したいくつもの投資方法との使い分け・両立を検討する価値は十分にあります。
たとえば、今いる子どものため確実に貯めたい教育資金は預貯金で、将来もう一人子どもができたときへの備えは投資、というように目的ベースでの使い分けができます。これにより確実性と効率性、適切なリスク選択とリスクヘッジを両立できます。
預貯金の注意点
- 利子はほぼゼロ
- 資産を「増やす」ことはできない
銀行にお金を預けておくだけで一定の利息が付きます。しかし、いくつかの大手銀行が採用している「0.002%」という金利の場合、100万円預けても年間で数十円しかプラスになりません。
高金利の定期預金を提供している銀行を選べば、それよりはるかに多くの利息が付与されます。しかしそれでも金利は「0.2%〜0.3%」であり、100万円を1年預けてようやく2〜3,000円プラスになる程度です。
以上の点から、預貯金はどの資産運用方法よりも低リスクですが「資産を増やすこと」には向いていません。投資による資産運用と組み合わせて活用することをおすすめします。
【年代別】おすすめ投資方法を紹介
次は、2つの年代別におすすめできる投資方法を紹介していきます。
20~30代におすすめの投資方法
20代〜30代にかけて、特におすすめできる投資方法は「投資信託」と「iDeCo」です。多くの資金を用意できる方は株式投資やREITも選択できるでしょう。
初期資金 | 投資方法 |
少ない(1,000円程度~) | 投資信託・iDeCo |
多い(10万円以上) | 株式投資・REIT |
投資信託とiDeCoがおすすめできる理由は、20代から30代にかけて投資を始める場合、次の点を意識する必要があるからです。
- 生活資金ではなく余剰資金で投資する
- 目先の利益率よりも長期運用を視野に入れる
- リスクヘッジを重視する
20代、30代のうちは・40代以降と比較して収入が低い傾向にあるため、目先の利益を追求すると失敗しやすいです。チャレンジすることは大事ですが、特に投資初心者は生活と投資のバランスを意識するべきです。
そこで、設計や運用をプロに任せられる投資信託は、初心者でも分散投資でリスクヘッジしながら資産形成ができるベストな方法です。またiDeCoに関しては、20代から始めることで無理なく十分な額の年金を積み立てることができます。
とりわけ20代のうちは、生活資金(家計)から資金を捻出するのではなく、あくまで余剰資金だけを用いて投資しましょう。常に「リスクヘッジ」することの重要性を意識し、その手段を確立しましょう。
40~50代におすすめの投資方法
40〜50代にかけて、特におすすめできる投資方法は「不動産投資」と「iDeCo」、そして「新NISA」の3つです。
初期資金 | 投資方法 |
少ない(10,000円~100,000円程度) | iDeCo・新NISA |
多い(10万~100万円以上) | 株式投資・不動産投資 |
40代になって立場も上がり収入も増えると、投資における選択肢が大幅に広がります。経験に基づいて一定のリスクを許容できるようになり、不動産投資や株式投資を行う際も、リスクとリスクヘッジのバランスを取るのが容易になります。
40代でまだ老後資金の準備をしていない人は、すぐに始めれば遅れを取り戻せます。国民年金にプラスアルファする形で老後資金を用意できる「iDeCo」はもとより、無期限での節税が可能になる「新NISA」も、早々に検討することをおすすめします。
初心者が資産運用をする際の気を付けること
次は初心者が投資による資産運用を始める際に注意すべき、5つの点についてそれぞれ解説していきます。
資産運用をする目的をはっきりさせる
資産運用を検討する際は、そもそもなぜ自分が資産運用を検討するに至ったのか、その理由を明確にするべきです。
登山するときは「頂上にたどり着く」という明確な目標がないと道に迷ってしまいます。同様に投資による資産運用も「老後の生活を豊かにする」とか「結婚する40歳までに1,000万円貯める」のような明確な目標がなければ、やる意味を見失ってしまうでしょう。
また目的を明確化させることは、リスクとリターンの適切なバランスを取ることにも繋がります。ある程度短期でお金を増やしたいなら流動性がある投資方法を、中長期的に資産形成したいなら低リスクで安定性が高い投資方法を選択できます。
投資に関する勉強をしておく
投資を始めるためには、必ずしも専門的な知識や経験が求められるわけではありません。しかし、銘柄ごとの特徴や分散投資の重要性を理解したり、先見性を養うことでリスクを回避するためには、少なくとも投資に関する基礎の勉強が必要です。
勉強といっても、大学に通ったり金融に関する資格を得るなど、必ずしも専門的な知識を勉強しなければいけない、というわけではありません。昨今はネット上の教材やコミュニティが発達しているため、学ぶ機会は十分多いからです。
投資についての学びを深めると、金融商品が予想外の値動きをした際や損切りが必要な時など、とっさの判断を下さなければならないとき、より適切な判断ができるようになります。
少額から投資を始める
初心者は少額投資から始めることで、リスクを抑えたうえで投資に関する経験を着実に積むことができます。すでに解説したように、投資信託やREIT(リート)などは100円〜1,000円程度で投資を始められるため、おすすめできます。
リスク分散を心がける
投資には「卵は1つのカゴに盛るな」という金言がありますが、これは分散投資によるリスクヘッジの重要性を端的に表しています。
投資対象を1つに絞るのは簡単ですが、価値が落ちたときに「滑り止め」となってくれるものがなく、大きな損失を被ります。しかし複数の商品(銘柄)に投資しておくなら、1つの価値が落ちても他の商品が「滑り止め」となり、損失を最小限に留めることができます。
FPや金融機関窓口で相談をする
投資家は経験を積むにつれて市場を適切に判断できるようになりますが、それと同時に「バイアス」の影響も受けやすくなります。論理的な根拠ではなく、今までの経験や勘に基づいて重要な判断を下してしまうのです。
これを避けるために、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談することができます。投資初心者だけでなく経験豊富な中・上級者も相談するなら、第三者からの適切な提案やアドバイスを投資行為に反映することができます。
初心者が投資をする際に活用できる免税・非課税制度
次は、初心者が投資をする際に活用できる2つの制度について、簡単に解説していきます。
つみたてNISA・NISA(少額投資非課税制度)
一定の運用益が非課税になる「つみたてNISA・NISA(少額投資非課税制度)」は、投資による資産運用と節税を両立したい人におすすめできます。それぞれの違いについては、次の表をご覧ください。
比較項目 | つみたてNISA | NISA |
非課税投資枠(年間) | 40万円 | 120万円 |
非課税保有期間 | 20年 | 5年 |
運用可能商品 | 投資信託(金融庁が認可したもののみ) | 株式・投資信託・REIT・ETFなど |
どちらも非課税枠が適用されることで節税が可能ですが、非課税保有期間が大幅に異なります。短期運用で利益を出したい人はNISA、長期の非課税期間が欲しい方はつみたてNISA、というように選択が変わります。
ちなみにこの制度は、2024年から「新NISA」という新しい制度に変わります。具体的には次の点が変更されます。
- 併用できる「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の新設
- 年間投資枠が最大240万円に拡大され、限度枠は1,800万円となる
- 非課税保有期間が無期限になる
- 非課税枠の再利用が可能になる
現行のNISA制度への新規加入は2023年で終了するため、今後は非課税枠や非課税期間が拡大される「新NISA」への加入検討をおすすめします。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
国民年金加入者が将来受け取れる国民年金にプラスして、私的年金の給付を受けられるようになる仕組みが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。国民年金に加入している人が対象となります。
iDeCo加入者は毎月一定額を掛金として支払い、自ら決定したポートフォリオに投資することで積み立てが可能です。
運用益を含む積み立てたお金は、60歳以降に年金形式または一時金形式で受け取ることができます。単なる貯蓄と明確に異なるのは、掛け金がすべて所得控除になる点や、運用益が非課税になる点です。
初心者が利用するのにおすすめの証券会社5選
次は、投資初心者におすすめできる5つの証券会社を紹介します。
楽天証券
運営会社 | 楽天証券株式会社 |
口座開設数 | 約900万口座(2023年時点) |
商品数 | 国内株式:約4,000本 米国株式:約4,900本 投資信託:約2,600本 |
NISAの取扱い | ◯ |
iDeCoの取扱い | ◯ |
取引手数料 | 0円~ |
貯まるポイント | 楽天ポイント |
専用アプリ | ◯(iSPEED) |
楽天経済圏との連携により、効率的にポイントを貯められるのが「楽天証券」です。楽天証券は金融商品の取引で「楽天ポイント」が貯められるほか、楽天市場でのショッピングやネットサービスに利用できます。
すでに900万以上の口座開設数を記録するなど実績は十分ですが、取り扱っている銘柄数も豊富です。特に国内株式の取扱数は国内最高水準です。
楽天証券を利用する方は「楽天口座」を開設することで、年率「0.1%」という高金利が適用されるほか、残高不測時の自動チャージ機能も利用できます。
SBI証券
運営会社 | 株式会社SBI証券 |
口座開設数 | 約1,100万口座(2023年時点) |
商品数 | 国内株式:約3,200本 米国株式:約5,400本 投資信託:約2,600本 |
NISAの取扱い | ◯ |
iDeCoの取扱い | ◯ |
取引手数料 | 0円~ |
貯まるポイント | Tポイント・Vポイント・Pontaポイント・dポイント・JALマイル |
専用アプリ | ◯ |
国内で初めて口座開設数が1,000万件を超えたのが「SBI証券」です。SBI証券は取扱商品の豊富さが特徴であり、米国だけでなく韓国や中国、ベトナムなどの株式にも対応しています。特に米国株式の取扱数は、国内最高水準です。
さらにSBI証券は2023年9月より、一定の条件を満たすことで取引手数料が無料になる取り組みをはじめました。これにより、取引手数料というランニングコストを気にせずに、自由な取引が可能となります。
DMM株
運営会社 | 株式会社DMM.com証券 |
口座開設数 | 約110万口座(2023年4月時点) |
商品数 | 国内株式:約2,500本 米国株式:約2,000本 |
NISAの取扱い | ◯ |
iDeCoの取扱い | ◯ |
取引手数料 | 0円~ |
貯まるポイント | DMM株ポイント |
専用アプリ | ◯(DMM株) |
取引に便利かつ視認性の高いツール・アプリを提供しているのが「DMM株」です。当サービスは米国株式の投資に対応していますが、専用のスマホ用アプリから手数料無料で売買が可能です。米国株式なら、約定金額による手数料の違いを気にする必要もありません。
「DMM株」では取引で「DMM株ポイント」を貯めることができます。レートは取引手数料の1%となっており、ポイントが貯まると1ポイントあたりを1円としてキャッシュバックされ、取引に使用することができます。
松井証券
運営会社 | 松井証券株式会社 |
口座開設数 | 約145万口座(2022年時点) |
商品数 | 国内株:約1,000本 米国株:約1,600本 投資信託:約1,700本 |
NISAの取扱い | ◯ |
iDeCoの取扱い | ◯ |
取引手数料 | 0円~ |
貯まるポイント | 松井証券ポイント |
専用アプリ | 松井証券 日本株アプリ |
新NISAへの加入を検討しているなら、同取引に関する売買手数料の無料化を表明している「松井証券」がおすすめです。具体的には、新NISAにおける日本株・米国株・投資信託の3つの取引において、すべて手数料が0円となります。
松井証券での取引は「松井証券ポイント」付与の対象となります。投資信託では銘柄に関わりなくポイント還元を受けられ、貯めたポイントは「PayPayポイント」や「dポイント」など、他のサービスに交換することもできます。
マネックス証券
運営会社 | マネックス証券株式会社 |
口座開設数 | 約220万口座(2022年時点) |
商品数 | 国内株:約3,800本
米国株:約5,000本 投資信託:約1,300本 |
NISAの取扱い | ◯ |
iDeCoの取扱い | ◯ |
取引手数料 | 0円〜 |
貯まるポイント | マネックスポイント |
専用アプリ | ◯(10の独立したアプリ) |
最後に紹介するのは、手数料の安さおよびポイント還元率に関して突出している「マネックス証券」です。マネックス証券では米国株を取引手数料無料で購入できるほか、新NISAにおけるすべての取引手数料を無料化すると発表しています。
マネックス証券はクレジットカードでの積み立てを検討している方にもおすすめです。「マネックスカード」を作成し投信積立を利用すると、最大「2.2%」のポイント還元を受けることができます。
貯めたマネックスポイントは手数料として充当できるほか、他社のポイントに交換したり、暗号資産の購入に充てることも可能です。
初心者におすすめの資産運用方法に関するFAQ
最後に、初心者が抱きがちな資産運用に関する3つの質問に回答していきます。
初心者は投資で1000万円稼げる?
投資の初心者が1,000万円稼ぐことは不可能ではありませんが、多額な資金とリスクを負ってでも目標にするべき金額なのかどうかは、よく考えるべきです。
たとえば株式投資やFXなど、市場の流れを読み切ることで大きな値上がり益を得たり、レバレッジを利用することで所持する資金以上の投資を行い、短期的に見ても莫大なリターンを得ることができた人は実際にいます。
しかし株式投資やFXなどの投資は「投機の見極め」が重要であり、多くの人がその「投機」を見誤ることで、甚大な損失を出しているのも確かです。
すでに解説したとおり、初心者が資産運用を目的として投資を始めるなら「短期で1,000万円稼ぐ」という目標を立てるよりも、10年、20年以上先を見て「トータルリターンでプラス1,000万円を目指す」ことの方が、はるかに現実的です。
初心者はそもそも資産運用しないほうがいい?
初心者かどうかにかかわらず、資産運用の是非については個々の考え方や目標に依存します。たとえば銀行に貯蓄しておくだけでは資産はほとんど増えないので、「効率的に増やしたい」と考える方は資産運用を検討するべきです。
逆に、確実に毎月同じ金額を積み立てる方が安心、少しでもリスクを取りたくない、と考える方は、貯蓄や低リスクな貯蓄型保険を選ぶ方が良いでしょう。
この点に関して、自分だけでは正しい判断できないと思うなら、FP(ファイナンシャルプランナー)などの「お金のプロ」に相談することをおすすめします。個々の収入や資産状況を踏まえ、第三者として最適な提案をしてくれるからです。
初心者は株を買うなって本当?
投資初心者は資金だけでなく投資に関する「知識や経験」も不足しているため、「仕事をしなくても稼げる」といった株式投資の宣伝文句に釣られて飛びつくべきではない、というのは正しいです。
しかし、正しい資金管理方法を身に付けることや、購入する銘柄・銘柄数の選定基準、また分散投資でリスクヘッジする方法の確立などに関して、ある程度時間をかけて準備したうえで行うなら、いずれ株式投資の投資家として成功することは可能です。
まとめ
初心者にもおすすめできる投資方法とは、ただ単に低リスクなだけでなく、リスクヘッジの手段が確立されているものです。とりわけ中長期的な視点での資産運用を考えた時、20代からiDeCoやNISAを始めることもできるでしょう。
たとえ初心者であっても、自分が今持っている資産、そして今後積み上げていく資産と向き合うのは、他の誰でもなく「投資家自身」です。理想のライフステージを歩んでいくために勉強し、常に最適解を選んでいけるよう努力していきましょう。